【Guava】ClassToInstanceMapの使い方

Javaで複数の型に対応したインスタンスを一元管理したい場合、通常は Map<Class<?>, Object> を使うことになります。しかしこの方法では、毎回キャストが必要だったり、型の整合性がコンパイル時に保証されなかったりと、型安全性に問題があります。

こうした課題を解決してくれるのが、GoogleのGuavaライブラリが提供する ClassToInstanceMap です。これは、クラスとそのインスタンスを型安全にマッピングできる特殊なマップで、依存性注入(DI)や設定管理など、実用的な場面でも活躍します。

この記事では、ClassToInstanceMap の基本的な使い方から、注意点、そして実際のユースケースまでを、Javaエンジニア向けにわかりやすく解説します。

目次

ClassToInstanceMapとは何か?

ClassToInstanceMap<B> は、クラス型 Class<T> をキーとして、その型のインスタンス T を型安全に保持できる特殊なマップです。これは Google の Guava ライブラリに含まれるユーティリティクラスで、com.google.common.collect パッケージに属しています。

ここでの <B> はベース型(スーパークラス)を表しており、Object や特定の共通インターフェースを指定できます。

通常の Map<Class<?>, Object> では、値の取得時にキャストが必要となり、型の不一致によるバグが起こりやすいという問題があります。一方で、ClassToInstanceMap はジェネリクスを利用することで、コンパイル時に型の整合性をチェックでき、安全性の高い設計が可能になります。

主な用途としては、以下のような場面が挙げられます。

  • 複数の型に対するインスタンスの一元管理
  • シンプルな依存性注入(DI)の代替手段
  • クラスごとの設定オブジェクトやハンドラの管理

Java標準ライブラリではこのような型安全な仕組みは提供されていないため、ClassToInstanceMap を使うことで、より堅牢で柔軟な設計が実現できます。

基本的な使い方:型安全にインスタンスを登録・取得する方法

ClassToInstanceMap を使えば、特定のクラス型に紐づくインスタンスを型安全に登録・取得できます。以下は、その基本的な使い方を示すシンプルな例です。

コード例:ClassToInstanceMapの基本操作

import com.google.common.collect.ClassToInstanceMap;
import com.google.common.collect.MutableClassToInstanceMap;

public class Example {
    public static void main(String[] args) {
        // マップの生成(Objectをベース型に指定)
        ClassToInstanceMap<Object> map = MutableClassToInstanceMap.create();

        // 型ごとにインスタンスを登録
        map.putInstance(String.class, "Hello, world!");
        map.putInstance(Integer.class, 123);

        // 型に応じてインスタンスを安全に取得(キャスト不要)
        String str = map.getInstance(String.class);
        Integer num = map.getInstance(Integer.class);

        System.out.println(str); // Hello, world!
        System.out.println(num); // 123
    }
}

メソッドのポイント

  • putInstance(Class<T> type, T value)
    指定した型に対応するインスタンスを登録します。
  • getInstance(Class<T> type)
    登録されたインスタンスをキャストなしで型安全に取得できます。登録されていない場合は null が返ります。

ImmutableClassToInstanceMapの作成方法

ClassToInstanceMapには、MutableClassToInstanceMap(可変)とImmutableClassToInstanceMap(不変)の2つの実装があります。

ImmutableClassToInstanceMapの作成例は下記の通りです。

// ビルダーパターンを使用
ClassToInstanceMap<Object> config = ImmutableClassToInstanceMap.builder()
        .put(String.class, "Application Name")
        .put(Integer.class, 8080)
        .put(Boolean.class, true)
        .build();

なぜ型安全なのか?

Javaで異なる型のインスタンスを1つのマップで扱おうとすると、通常は次のように Map<Class<?>, Object> を使うことになります。

Map<Class<?>, Object> unsafeMap = new HashMap<>();
unsafeMap.put(String.class, "abc");

// キャストが必要
String str = (String) unsafeMap.get(String.class);   // OK
Integer num = (Integer) unsafeMap.get(String.class); // NG:コンパイル時に検出不可❌
Object obj = (Integer) unsafeMap.get(String.class);  // NG:コンパイル時に検出不可❌

この方法では、値の取得時に明示的なキャストが必要です。もし実際の型と異なるクラスでキャストしてしまうと、ClassCastException が実行時に発生します。このようなエラーはコンパイル時に検出されないため、バグの原因となりやすいのが難点です。

ClassToInstanceMapによる型安全の仕組み

ClassToInstanceMap はジェネリクスを活用することで、型とインスタンスの整合性をコンパイル時に保証します。

ClassToInstanceMap<Object> safeMap = MutableClassToInstanceMap.create();
safeMap.putInstance(String.class, "abc");

// キャストが不要
String str = safeMap.getInstance(String.class);  // OK
Integer num = safeMap.getInstance(String.class); // NG:コンパイル時に検出可✅
Object obj = safeMap.getInstance(String.class);  // OK

このように getInstance() を使うことで、キャストは不要になり、誤った型での取得はコンパイルエラーになります。これにより、実行時の型エラーを未然に防ぎ、安全で堅牢なコードを書くことができます。


まとめると、ClassToInstanceMap が型安全である理由は次の通りです。

  • 値の登録時に指定型と値の型が一致しないと ClassCastException(実行時)
  • 値の取得時に明示的なキャストが不要(読みやすく、保守性が高い)
  • コンパイル時に型の整合性をチェックできる(バグを早期に発見)

よくあるユースケース

ClassToInstanceMap は、型に応じたインスタンス管理を必要とするさまざまなシーンで活躍します。ここでは、実際によく使われるユースケースを3つ紹介します。

1. 型ごとの設定オブジェクトを一元管理する

map.putInstance(DatabaseConfig.class, new DatabaseConfig(...));
map.putInstance(CacheConfig.class, new CacheConfig(...));

アプリケーション全体の設定情報を、クラス単位で整理・取得できるため、構成の見通しが良くなり、変更にも柔軟に対応できます。

2. シンプルな依存性注入(DI)コンテナとして利用する

map.putInstance(ServiceA.class, new ServiceAImpl());
map.putInstance(ServiceB.class, new ServiceBImpl());

各サービスをクラスに紐づけて登録することで、簡易DI機構として機能します。ServiceA service = map.getInstance(ServiceA.class); のように取得して使用すれば、実装クラスに依存しない柔軟な設計が可能となり、たとえば本番環境とテスト環境で切り替えるといったことも可能です。

3. クラスごとの処理を切り替えるストラテジーパターンの実装

map.putInstance(EventTypeA.class, new EventHandlerA());
map.putInstance(EventTypeB.class, new EventHandlerB());

イベントの種類や条件に応じて異なるハンドラをマッピングすることで、分岐処理をクリーンに実装できます。オブジェクト指向設計とも相性が良く、拡張にも強い構成が可能です。

まとめ:型安全にインスタンスを管理するならClassToInstanceMap

ClassToInstanceMap は、クラスごとのインスタンスを型安全かつ簡潔に管理できるGuavaのユーティリティクラスです。Map<Class<?>, Object> のような実装でありがちなキャストの手間や型不一致のリスクを避けることができ、より堅牢で読みやすいコードを実現します。

主な利点は以下の通りです。

  • 型安全性: コンパイル時に型の整合性をチェック
  • コードの簡潔性: 明示的なキャストが不要
  • 保守性: 型の不整合によるバグを防止

特に以下のような場面で威力を発揮します。

  • 設定やサービスの型ごとの一元管理
  • 簡易的な依存性注入(DI)
  • イベントやストラテジーパターンの柔軟な実装

Java標準ライブラリにはない、型とインスタンスの整合性をコンパイル時に保証する仕組みは、設計の安全性を高め、バグの温床を減らしてくれます。

Guavaを導入しているプロジェクトであれば、ClassToInstanceMap を積極的に活用することで、インスタンス管理のコードをよりシンプルかつ安全に改善できるでしょう。

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